February 8, 2009
[猫の本フェア] ノラや
「ノラや」内田百閒
出版社:中央公論新社
ISBN:978-4122027848
(猫は雑種が一番!な管理人の推薦)
数年前にうちの猫が家出をしてしまい、気分が落ち込む日が続きました。そのときに本棚から無意識に手に取り、読んだのがこの本。内田百閒に可愛がられた2匹の猫「ノラ」と「クルツ」。本作は、そのノラとクルツとの同居生活と別れ、猫についての考察をまとめた短編を22本収録しています。
どこからか通い始めた母猫に連れられて、ある日、庭で遊んでいるうちに勢いあまって水瓶に飛び込んでしまった子猫。最初こそ、野良猫のままとして飼おうということに決めた夫妻だったが、その雄の子猫「ノラ」はいつの間にか、風呂のいつでも暖かい蓋のうえで、無防備に腹を見せて居眠りするようにまでなってしまう・・・。猫好きならそうそう!と思い当たるところも多い、人間と猫の同居生活の場面が展開される「彼ハ猫デアル」。 その愛猫ノラが雨の日に行方不明になってしまった事件。その後の内田百閒の落胆とノラ大捜索の始終を日記形式であらわした作品が、「ノラや」とその続編数作です。
その行方不明の期間にあらわれた「クルツ」という猫を飼い始めることによって、ノラの帰らない傷心が癒されるのを感じる反面、複雑な心持にもなる百閒先生・・・。特にこの部分が何度読んでもぐっと来ます。
この2作品のほか、クルツの臨終を書いた後半の作品「クルやお前か」など、作家ならではの心情の機微をとらえた文章がストレートに響きます。猫好きならば必読必携の本。
「猫の本フェア」開催中! 詳しくは222.nyanta.jpへ。
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