Fennesz 「Black Sea」
「Black Sea」 / Fennesz
label : commons
release : 12, 2008
先月、イギリスのレコードレーベルTouchからリリースされたFenneszの新作「Black Sea」が、Pitchforkのレビューで「8.4」という高評価。国内盤はcommonsから12月10日に発売が予定されています。
Fenneszは、「Kid A」経由で聴いたRadioheadファンもいるのでは?
MySpace.comのアーティストページでは、この新作のなかから「Perfume For Winter」がフル音源で公開されています。
季節に合った、きれいなタイトルですね。
Fenneszは2001年のアルバム「Endless Summer」を聴いていて、6月のMonthly Best Tunesでも感想を書きました。
こういった歌の無いアンビエントな電子音楽を聴いているときは、ロックなど他の音楽と違って、音楽と自分がコミュニケートしている感覚というものはほとんど無い。
例えて言えば、トラックで知らない誰かと並走しているような感覚。相手は自分より少し離れたところを走っている。ペース(気分)が合えばぴったり呼吸が合って、そこで二言三言言葉を交わすかもしれない。そうじゃないときは特に意識しないまま、視界の角を過ぎていくだけ。
わずかな残滓だけをあとに、イメージを掴めないまま音楽が拡散してしまうように感じることがあって、正直この手のジャンルは好きだとは今でも言い難い。
しかし、Fenneszの音楽はアーティストの感性が丁寧に織りこまれていて、音景にその人間味を感じる。ざらざらとしたノイズのレイヤーの隙間にあらわれる、ときに郷愁を誘うようなギターのやわらかい音がその鍵のようだ。「Endless Summer」のジャケットに写る、オレンジ色に染まる美しく静かな海岸。きっと、己はいつかその場所に居たのだろう。
共感力で、余所余所しかったノイズ・ミュージックの印象を変えてくれた音楽のひとつ。
2007年の坂本龍一とのコラボ作品「cendre」から。
■ YouTube - OTO - fennesz & sakamoto ryuichi
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